「Believe It」よりややパワーダウンの「Million Dollar Legs」
Musician●Tony Williams(drums)
Title●Million Dollar Legs(1976年)
■Tower Recordで購入
Mデイヴィスの楽団で華々しく表舞台に立った「地下鉄ドラマー」Tony Williamsによる1976年の作品です。前作「Believe It」(1975年)から、従来の「Tony Williams Lifetime」に「New」をつけて再出発しました。前作でギタリストがジョン・マクラフリンからアラン・ホールズワースに代わった影響もあって一気にフュージョン色が強まりました。メンバーは「Believe It」に引き続き、ギターがAllan Holdsworth(アラン・ホールズワース)、ベース&ボーカルがTony Newton(トニー・ニュートン)、キーボードがAlan Pasqua(アラン・パスクア)のカルテット構成。1976年6月、コロラドでレコーディング。
前作との比較ではベース奏者のTony Newtonのボーカルを前面に押し出すとともに、折からのディスコブームに乗ったファンク色が濃厚な作風に。「Million Dollar Legs」あたりはトニーが叩き出す軽快なリズムに乗って、独特なグルーヴ感を漂わせていますが、逆に言えば2人のアランがの比重が弱まったことは否めません。特にアラン・ホールズワースのギターは前作よりも明らかにパワーダウンし、やる気も失せてしまったかのようです。やる気満々の黒人勢に対してあまりに対照的で、結果としてバンドとしての一体感が低下してしまうことに。バンマスのTonyの迷いが手に取るようにわかります。
唯一このアルバムで盛り上がりをみせるのがラストの「Inspiration Of Love」で、初期RTFを思わせる疾走感と、ホールズワースの超絶技巧、そしてストリングスを効果的に使った秀逸なアレンジが素晴らしいの一語。
そんなわけで、個人的にはあまりお勧めとはいえません。以前は「Believe It」とこのアルバムは別売りされていましたが、最近では2枚を1枚にまとめた「Collection」という編集盤がで出ています。聴き比べてみるのも一興かと。しかし「Collection」の登場によって、このアルバムの存在価値もさらに低下してしまいました。
ところで、「Believe It」「Million Dollar Legs」の2枚がオフィシャル音源ということになっていますが、女性ボーカルを加えた未発表スタジオテイクが存在します。こちらは海賊盤でしか聴くことはできませんが、さらにファンク色が強まっています。ホールズワースは半ばヤケクソ気味にもの凄いフレーズを連発しています。どちらかというと、「Million Dollar Legs」よりも優れているように思えるのですが。
お約束通り、このアルバムを最後にホールズワースはTony Williamsの元を去りますが、同時期に初ソロとなる「Velvet Darkness」を録音しています。こちらに関しては、機会を改めて。その後、アメリカでの活動を終えたホールズワースは、ロンドンに戻り「Gong」に参加します。Gongでの水を得た魚のような生き生きとしたプレイを聴くと、やっぱりユーロのギタリストなのだなと痛感します。
●Musicians
Tony Williams / drums
Allan Holdsworth / guitar
Tony Newton / bass,vocal
Alan Pasqua / keyboard
●Numbers
1.Sweet Revenge
2.You Did It To Me
3.Million Dollar Legs
4.Joy Filled Summer
5.Lady Jade
6.What You Do To Me
7.Inspiration Of Love
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