SONY規格にもの申す!
たまにはCD音源以外の話題も。
1979年にSONYが「ウオークマン」を発売してから、私たちの音楽環境は劇的に変化したように思えます。それより前は、音楽を聴くという行為は室内に限られ、大きなステレオセットの前に鎮座して、ありがたく名曲を拝聴するというスタイルが圧倒的だったと思います。したがって、ステレオセットも「ありがたい存在」として、どんどん高級化し、大型化を続けていった感がありました。「ありがたい存在」であるステレオセットには、白いレースが敷かれ、花瓶などが置かれていたはずです。
そんな状況で、ウオークマンは手軽に音楽を室外や屋外、そして車中に持ち出せたという点で実に画期的でした。もちろんウオークマン登場以前にも、カセットデッキという持ち運び可能な機器はありましたが、いかんせん機動力という点では限界がありました。ウオークマンはポケットに、鞄の中に忍ばせて、歩きながら、通勤、通学の途中に自分が好きな音楽を聴けるというのが最大の魅力だったのです。
ウオークマンの普及と軌を一にしたのが、携帯型ヘッドフォンの発展です。室内で音楽を聴くうえでは、ヘッドフォンも携帯性から無縁でいることができましたが、当然、ウオークマンの登場以降は、軽くて高性能なヘッドフォンの開発が求められました。ウオークマンが電車の中で使われるようになるにつれて、同時に「音漏れ問題」が叫ばれるようになり、「音漏れ防止」も解決するべき課題として突きつけられました。
ご存じのとおり、ウオークマンには購入時に今も昔も付属ヘッドフォンがついていますが、機能や音質としてはスタンダートタイプ。人間というものは欲深いもので、次第に「もっと良い音質で聴きたい」ということで、ウオークマン本体とは別に、より良いヘッドフォンを追い求めることになりました。頭部をまたぐオーバーヘッドスタイルが何となくダサいということで、両耳から下に下げるスタイルが登場したのも、ウオークマンの大々的な流行があったからこそです。この両耳からぶら下げるスタイルは、いまでも多数派ではないでしょうか。
さて、やたらと前置きが長くなりました。問題は両耳から下げるスタイルが登場したタイミングで、左右のコードを同じにするか、あるいは右か左のいずれかの長さを変えるかという選択です。左右対称の長さならば、使う立場からすると何の迷いも感じませんが、問題は左右非対称の場合です。トップリーダーたるSONYは何を考えたのか、左側のコードを短くして右側のコードは首の後ろに回すという、新しいスタイルを提唱しました。おお、なんというコペルニクス的転回な発想なのでしょう。この新しい鑑賞スタイルによって、電車の中ではやおらヘッドフォンのコードを首に回してから聴き始める姿が見られるようなりました。しかし、冷静に考えて本当にこの聴き方が居心地が良いものだと言えるのでしょうか。もちろん、この聴き方がベストだと確信する人にとっては、何をかいわんやというところだと思います。しかし、生来の天の邪鬼である自分にとっては、
①左右非対称という安定感のなさ
②左右非対称から生じる重量バランスの悪さ
③首の後ろに回すことでの首に対する違和感
の3点がものすごい違和感となって立ちはだかりました。わかりやすく言えば「使いづらい」のです。しかし、この左右非対称スタイルは「新しい形のヘッドフォン」として瞬く間に市場を席巻し、左右対称のヘッドフォンを使う人間は古いなどという無言の圧力を感じるまでになってしまいました。しかし、本当に左右非対称が素晴らしいと思っていた人はどのくらい存在していたのでしょうか。勝手な思いこみかもしれませんが、私が感じた3点の違和感を少なからず感じた人だって、少なからず存在したはずです。でも、「天下のSONYが言ってるんだから間違いない」などと、無理矢理に自分を納得させた人もけっこういたのではないでしょうか。
やがて私のような違和感を感じるユーザーの声に耳を傾ける良心的なメーカーも出てきました。たとえばオーディオ・テクニカさんなどはヘッドフォンメーカーにあって、実に優れた商品を開発していますが、あえて「左右対称」(Yタイプなどと称しています)であることを標示するなど毅然とした姿勢を見せています。その意気や、よし!何もSONY規格だけが絶対的ではないという発想が素敵です。パナソニックさんも左右対称が主流ですね。
とは言え、SONYも首からネック的にぶら下げるタイプの製品では、コードも左右対称です。まあ、首から下げるタイプで左右対称にする意味はないわけで当たり前の話です。しかし、もっともポピュラーでもっとも売れ筋である両耳からぶら下げるタイプは、相変わらず「左右非対称」です。
大の大人がたかがヘッドフォンでなにを、とお思いかもしれませんが、ほぼ毎日使うものだけに、自分に最もフィットする物を使いたいですね。付属ヘッドフォンばかりにこだわらずプラス2000円くらいグレードアップするだけでも、かなりの高音質を期待することができます。ちなみに貧乏性の私はあまり高級な製品を携帯すると緊張してしまうので、オーディオテクニカのATH-CKM50を愛用しています。最近、CKM55という後継製品が出たので、機会があれば試してみたいですね。
ところでヘッドフォン本体を含めたコードの色について、考えるところがあります。この「色問題」については機会を改めて。
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