アジア系ギタリストの繊細な味わい、Nguyen Le
Musician●Nguyen Le(guitar)
Title●Maghreb & Friends(1998年)
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ご存じのとおりフランスはかつてベトナムやアルジェリアなどを植民地にしていました。イギリスなどのほかの宗主国と違って興味深いのが植民地の文化を巧みに吸収し、自国の文化と融合させて新たな文化を作っているという点です。アルジェリア周辺の肥沃な土地を「マグレブ地方」と言いますが、現地の音楽とヨーロッパ的な音楽とを融合させた音楽を「ライ音楽」 と呼びます。フランスは国策としてライ音楽の振興を進めているそうです。なるほど芸術の国と言われるゆえんですね。
今回紹介するのは、パリ生まれのベトナム系フランス人ギタリストNguyen Le(グエン・レ)の作品です。サウンドとしてはベトナム民俗音楽風の一辺倒と思いきや、ほかにもライ音楽、ジャズ、ハードロックなどのエッセンスを取り入れています。全曲に通じて聴かれるなんともこ気味よいパーカッションとエスニックなコーラスに乗じてNguyen Leの超絶技巧が響き渡るという感じです。それほど弾き倒すという感じではないのですが、一度聴いたら忘れられない独特のフレーズはかなりの個性派という印象を受けます。
Nguyen Leのギタープレイはスコット・ヘンダーソンとアラン・ホールズワースのプレイを足して2で割ったような音作りとよく言われますが、確かに極めて滑らかで繊細なフィンガリングは両巨頭を彷彿とさせます。かといって、たとえば両巨頭と同じアングロサクソン人が同様のことを目指してもおそらく同じ音は出せないでしょう。表現が難しいのですが、音の端々に、音間の微妙な「間」に、ビブラードの微妙なニュアンスに、アジア人らしい繊細さとこだわりがうかがえます。
個人的にはアジア系ギタリストだからこそ出せる、微妙な味わいに注目していただきたいと思います。聴けば聴くほど味わいが出てくる「するめイカ」的音作りは、西欧人にはなかなかできない芸当だと思います。生まれて初めてベトナム風春巻きを食べたときには「?」と思う人も多いかと思いますが、慣れるにしたがって次第に病みつきになるケースが多いと聞きます。実は、私もほとんど毎日のようにこのアルバムにはまってしまっています。
●Musiciians
Nguyen Le/el. & ac. guitars, fretless bass
Karim Ziad/drums, gumbri, perc & vocals
Michel Alibo/electric bass
Bojan Zulfikarpasic/acoustic piano etc.
●Numbers
1.Ifrikyia
2.Constantine
3.Louanges
4.Yhadik allah
5.Nora
6.Funkrai
7.L’Harka li jeya
8.Guinia
9.Nesraf
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