新感覚の高速アルペジオ、Ben Monder
Musician●Ben Monder(guitar)
Title●Flux(1995年)
■ディスクユニオンで購入
いまやNYの先鋭的ジャズシーンで超売れっ子のセッションギタリスト、Ben Monder(ベン・モンダー)のソロアルバム第1弾です。1995年にレコーディングされなぜかカナダでリリースされています。
いまでこそ「NEW TALENTレーベル」の主要作品で引っ張りだこの活躍ぶりを見せるベン・モンダーですが、このデビューの時点ですでに大変個性的なプレイを披露しています。彼のプレイの特徴は何といっても、あまりにも速くて個性的な「アルペジオ」。ほぼ全曲にわたってその高速アルペジオが支配し、聴く者を妙なトランス状態へと追い込みます。浮遊感あふれるという点ではビル・フリゼールと共通していますが、頑固にアルペジオで押し通す彼のプレイは誰の追随を許しません。といいいますか、誰も真似しないと思います。メンバーはあのJim Black(dr)とDrew Gress(b)というトリオ構成。
このアルバムでもソロらしいソロはわずか1曲のみで聴くことができますが、かなり暴力的で激しいものです。全体を覆い尽くす静寂な世界に、ただ1回だけいきなり割り込んでくる暴君のようなバイオレンスソロは、かなり異様な世界を現出させています。よく聴いてみるとあのロバート・フリップ卿のソロに似ているように思えます。いずれにしろ、この超個性派プレイヤーの今後は見逃すことはできません。
彼本人の名義でリリースされた作品はこれまでにたった4作。ほかはほとんどセッション活動という特異な存在です。2009年もすでに4作に名を残しています。アメリカ人でありながら内省的なプレイスタイルは、これからヨーロッパのジャズシーンからも受け入れられる可能性があるような、ないような。日本では、間違いなく無理でしょうね。これだけは確信をもって断言できる奇天烈系ギタリストです。
●Musicians
Jim Black-drums
Drew Gress-bass
Ben Monder-guitar
●Numbers
1.Muvseevum
2.Flux
3.Food for the Moon
4.Red Shifts
5.Jello Throne
6.Don't Look Down
7.Orbits
8.O.K. Chorale
9.Lactophobia
10.Propane Dream
« テンション低めの売れっ子ギタリストKrister Jonsson | トップページ | 日本が誇るシンフォ系プログレバンド「Mongol」 »
「ジャズギター」カテゴリの記事
- David Gilmore / Transitions(2017年)(2017.04.08)
- Kurt Rosenwinkel / Caipi(2017年)(2017.04.02)
- Wolfgang Muthspiel,Mick Goodrick / Live At The Jazz Standard(2010年)(2016.08.06)
- John Abercrombie / Within A Song(2012年)(2016.07.03)
- Albert Vila / The Unquiet Sky(2014年)(2016.06.25)
コメント
« テンション低めの売れっ子ギタリストKrister Jonsson | トップページ | 日本が誇るシンフォ系プログレバンド「Mongol」 »
Ben Monderは大好きなギタリストの一人です。
Ben Monderは希代の個性派ギタリストだという点に同感です。
自身名義の作品も内容が充実していると思いますし、サイドマンとしても多数の佳作に参加していますね。
でも、原点であるFluxを越える作品ないのではないかと言うのが私見です。
この作品の録音の際には2chの機材しかなく、ほとんど一発録音に近く苦労したというコメントをBen Monder自身がしているそうですが…
高いテンションと集中力を感じさせる本作品は、真に素晴らしいと思います。
幽玄で耽美的な演奏という意味ではMotian Bandの頃のBen Monderも素晴らしいと思いますが…
投稿: betta taro | 2010年2月10日 (水) 18時56分
betta taroさま
コメントありがとうございます。
Fluxの情報は初耳でした。そんな貧弱な機材であんな作品が生まれるなんて奇跡的ですね。
Ben Monder参加の作品は見つけ次第入手するように心がけてはいますが、お財布の中身と相談しつつという状況が悲しい次第です。
Mitian先生との共演作は、たぶん未聴なので機会あればチェックしてみたいと思います。
投稿: 奇天烈音楽士 | 2010年2月11日 (木) 12時57分
Ben Monderは私もできる限り音源を集める様にしていますが、元手がなく寂しい思いをしています(- -;
Motianとの共演は「Garden of Eden」がお勧めです。
Steve Cardenas, Ben Monder, Jacob Bro他、複数の管がフロントに勢ぞろいした豪華な作品です。特にTrack4のMesmerという曲は、アドリブはほぼなしで、全員がテーマを繰り返すというシンプルな構成の曲なのですが、Paul Motian Bandのリリシズムの極致のひとつだと思います。
Ben Monder参加の連作で「Holiday for Strings」も素晴らしいです。
Paul Motian はBill Evansトリオでジャズの頂点を極めた後も、ビルフリやら、Brad Shepikやらという、個性派ギタリストを巻き込んで、新しい音を追求しつづけている姿勢が素晴らしいと思います。
投稿: betta taro | 2010年2月11日 (木) 22時38分